効果的な英語学習:第二言語習得論
2025.03.03
英語は日本人にとって学ぶことが難しい言語です。これは日本語と英語がかけ離れた言語であるためであり、英語話者にとっても日本語は最も習得が難しい言語です。少しでも日本人にとって難しい英語を学びやすくなるために、「第二言語習得論」の観点から英語学習を見てみましょう。
第二言語習得論とは?
第二言語習得論とはすでに一つ以上の母国語を話す人が新たに外国語を学ぶ際に通るプロセスを研究している理論です。難しい感じがする言葉ですが、簡単に言うと「10歳ぐらい以降にどうやって人は新たな言語を学ぶか?」を考えている研究です。
日本人の英語学習においても、第二言語習得論内の幾つかの要素を理解して意識することによって、自分の課題を発見できる、何をすればいいのか分かる、など、効率よく学べる手助けになります。
今回は第2言語として英語を学んでいる日本語話者の皆様に役立つであろう部分を抜き出して簡単に解説します。
第二言語習得論における言語の要素
英会話は幾つかの要素に分けることができます。まず大分類は、リスニングとスピーキングです。
リスニングの中には、音声知覚と意味理解。スピーキングには、概念化、文章化、音声化、が要素として存在します。
下の図をご覧ください。
音声を文章や言葉として認識し、その言葉を理解し、自分が返す内容を概念化し、概念を文章に起こし、その文章を音声化する。この一連が出来て初めてスムーズな会話が成立します。
まずは漠然と「英語べらべらになりたい」ではなく、英会話を学ぶための要素をしっかりと認識すること、そしてそれから自分の課題に合わせた学習方法を取り入れることが重要です。
言語の要素ごとの鍛え方
以下に要素ごとの学び方を簡単に解説します。(もっと詳しく自分の課題と効果的な学習方法を学びたい方はバイリンガル講師によるコーチングもご検討ください。)
リスニング:音声知覚
まずは相手が言っている音を言語として認識できないと会話は始まりません。音を言語として認識できる技能を、音声知覚と呼びます。日本語話者にとってはとても高いハードルです。
英語には日本語にはない子音がいくつもあり、母音に関しては日本語の4倍ほど存在します。また日本語は音節ごとの発音を主に認識するところ、英語では発音に加えて音の高低と長短を認識する必要があります。更に、日本語にはあまり存在しない音の連結や脱落が、英語には至る所に存在します。
英語を聞いた時に、言葉として聞き取れない、ただの雑音として聞こえてしまうという方は音声知覚を鍛える必要があります。
この要素を鍛えるためには、リピーティングとシャドーイングが必要です。
まずはリピーティングから始めて、目で読んでいる言葉が、どのような音になるのか認識できるようにしましょう。発声時に再現できない音は聞き取れないことが多いです。リピーティングのために用意した音源の音を可能な限り真似ること、日本語の4倍の母音を再現するために口の変化を4倍にすること、音の高低と長短も真似ることを意識してください。
リスニング:意味理解
相手が言っている音を言葉や文章として認識できるけど、知らない言葉が多かったり特定の文法を分解して理解することに時間がかかる。そんな方は意味理解の要素に課題があります。
意味理解を鍛えるためにおすすめなのは2つの学習方法です。
一つ目は多読で語彙力を鍛えます。たくさん読んでください。ジャンルは自分の目的に合ったものが良いでしょう。仕事のために英語力が必要な方は、自分の専門に必要な語彙が多く使われている本や記事を、日常会話など幅広い英会話力を目標とされている方は好きなジャンルの小説がおすすめです。小説には情景描写やセリフが多く含まれているので、語彙力の幅を広げることに効果的です。とりあえずいっぱい読んでください。
そもそも読むことが苦手/嫌いという方も、英語学習者向けの短いものを探してみてください。
二つ目はチャンクごとのスラッシュリーディングです。英会話をしている時に文法を考えている暇はありません。文法を考えるより意味の塊ごとに理解していくことに意識を向ける必要があります。意味の塊に脳を慣れさせるためにはスラッシュリーディングが効果的です。読んでいる文章の意味の塊ごとにスラッシュを引いてみてください。だいたい前置詞や関係詞の前にスラッシュを引くと意味の塊ごとになります。スラッシュの塊を意識してリピーティングをして、音声知覚と同時に鍛えることも効果的です。
スピーキング:概念化
英語と日本語では話したい内容の概念の組み立て方が違います。
日本語では主語や目的語を省くことが多いです。例えば「もう食べた?」でも、英語では「あなたはもう夕ご飯食べた?」もしくは「ポチはもう餌食べた?」という必要があります。日本語で考える時も主語と目的語をはっきりさせることを意識することでトレーニングにもなります。どこで/誰が/何を/いつ。これらの情報を日常で意識することでも、英会話力は鍛えられます。
スピーキング:文章化
意味理解でも述べましたが、英会話をしている時に文法を考える暇はありません。
しかし、文章化を鍛えるためには文章を作る練習が不可欠です。ゆっくりと時間を取って文章を作るためには、書く必要があります。実は英語を学習している日本人には、「書く」というトレーニングが圧倒的に足りていません。毎日、3行日記でいいです。英語を書いてください。その時に、意味理解で述べた意味の塊を意識すること、概念化で述べた主語と目的語を明確にすることを意識してください。時間をかけて考えられる「書く」ということができなければ、短い時間で文章を作る必要がある「話す」が出来るわけがありません。是非たくさん書いて練習してください。
スピーキング:音声化
相手が言っている音を言語として認識し、文章の意味を理解し、自分が言いたいことを概念化し、正しい文章を作れたとしても相手に伝わる発声が出来ていなければ意思の疎通は取れません。ただ、音声化は音声知覚のトレーニングによって改善されているはずです。リピーティングとシャドーイングは音声化にも非常に効果的なためです。
とはいうものの、英会話においては音声化で躓く日本語話者が多いことは事実です。
しかし学習者各々苦手な音声化はあります。リピーティングやシャドーイングを頑張っても聞き取ってもらえない、そんなときはバイリンガル講師によるコーチングをご検討ください。
大人は論理と知識を使って学ぼう
言語を母語として学べるのは9歳~10歳ぐらいまでと言われています。しかし、その時期を過ぎてしまったとしてもネイティブレベルの英語を身に付けることはできないというわけではありません。大人には大人の武器があります。
言語というものを正しく頭で理解して、自分の課題に対して論理的に取り組むことができれば、ただ英語を話す環境に身を置くというだけでは得られない効率的な学習が可能です。
英語を第二言語として学ぶことは、現在まで多数の先人たちが挑戦し達成してきた目標です。第二言語習得論から少しでも効率的に学ぶヒントを見つけてみてください。