異文化コミュニケーションの視点から英会話を考える
2025.02.13
受験勉強で英語をすごく頑張った人でも、その後スクールや独学で英会話を長年学ばれてきた人でも、本番の会話になると英語を使った意思の疎通がうまくいかずに困ってしまうという方は多くいます。
語彙力を増やしたり文法の知識を強化して表現の幅を広げたり、ということが英語力強化として一般的に考えられています。
このような英語学習はもちろん重要なのですが、日本語と英語のコミュニケーションの形の本質的な違いという点が忘れられてしまうことも少なくありません。
本記事では英会話力のレベルに関わらず、英語を使ったコミュニケーションを実施する際に役立つ考え方、理解しておくと意思の疎通が効果的になる知識を紹介します。
目次
ハイコンテクスト文化 対 ローコンテクスト文化
日本語と英語では コンテクスト(文脈、状況、立場など)への依存度が違います。それによりコミュニケーションの形が変わってきます。
日英の違いに関して詳しく知りたい方はバイリンガルコーチングがおすすめですが、この記事では簡単に文化の違いを解説します。
それでは違いを見ていきましょう。日本語はハイコンテクスト、英語はローコンテクストです。
ハイコンテクスト文化:
察しあう文化であり、話し手を理解する責任を聞き手が持っている
・コンテクストに依存したコミュニケーション
・「暗黙の了解」「忖度」があり、あいまいな表現を好む
・自分にとって当たり前のことは言わない
ローコンテクスト文化:
言葉で明言する文化であり、聞き手に理解させる責任を話し手が持っている
・コンテクストに依存せず、言語でコミュニケーションを図ろうとする
・直接的で分かりやすい表現を好む
・寡黙であることは評価されない
これらの違いを認識し、英語を話す際にはローコンテクストを心がけることにより、語彙力や文法力とは別の観点で意思の疎通がスムーズになります。
特に話し手と聞き手における責任の所在の違いがコミュニケーションに大きな影響を及ぼします。
例えばハイコンテクストの日本語では、
「今日何食べたい?」と聞かれて
「う~ん、最近揚げ物多かったからな~…」
と答えるのは質問への回答の始まりとして日本語では自然だと思います。
回答を受けた聞き手は「最近揚げ物が多いということは何かサッパリとしたものがいいのかな?」と、回答した話し手が何を言いたいのかを察する責任を果たそうとします。
ローコンテクストの英語では同じ質問をされた際に、「自分は最近揚げ物をたくさん食べている」という情報から答えることはまずありません。このように答えることは、話し手として – 相手に簡潔に理解させる(察する労力を使わせない)という責任 – を果たしていないことになります。
聞き手になった際もハイコンテクストに慣れてしまっていると、こちらが察する必要がある回答を無意識に期待してしまっており、ローコンテクストの直接的な回答を咄嗟に聞き取れない、もしくはぶっきらぼうに感じてしまうことになります。
英会話においては、
・話し手として聞き手に察させることが無いように気をつけること
・聞き手としては察する必要がない直接的な回答を受ける心構えをすること
が重要となります。
これが出来ると出来ないでは、一般的な”英語力”が同じでも意思の疎通のスムーズさが大きく変わります。
伝わりやすい順番で話す
英語のローコンテクスト文化では具体的にはどのように話し手としての責任を果たすことができるのでしょうか?
それは聞き手が理解しやすい順番で情報を提供することによって可能となります。
ローコンテクスト文化で好まれる情報の順番:
1.大枠/結論
2.理由 または 詳細(いつ、どこで、だれが、なにを…)
3.具体例などあれば
4.改めて結論
「今日何食べたい?」に対する回答を例とすると、
「1.結論 蕎麦が食べたい。
2.理由 サッパリしたものがいいから。最近揚げ物多いし…
3.具体例 昨日の昼はとんかつ、夜はてんぷらだったんだよね。
4.改めて結論 サッパリした蕎麦が食べたいな。」
という順番で話せればローコンテクスト文化では理解してもらいやすいです。
更に、この順番で話すこと/考えることに慣れておけば、聞き手としても急に結論を言われて戸惑うことが少なくなるはずです。
理解を示す必要性とメリット
日本人の多くの方が、聞き手の時に以下のような問題に直面します。
① 話し手が言っていることを理解した←ここまではOK
↓
② 話し手が別の言い方で同じようなことを改めて話す←え?なんでまだ話してるの?
↓
③ 多分同じことを言っているんだろうけど、理解できていなかったのか不安になる。
このような経験はありませんか?
英会話初心者はもちろん、中上級者の方でも同じような経験をされているようです。
これは上記①と②の間に適切に聞き手としての理解を伝えることで解決します。
話し手が話し終えた時に、会話のボールは聞き手側に渡り、今度は聞き手側が話し手となり「理解した」ということを伝える責任を持つようになります。
ローコンテクスト文化では、話し手に情報を伝える責任があるため、聞き手側の簡単な相槌や無言の頷きだけでは話し手としての責任を果たせていないかと不安になります。そのため話し手は自分が正しく情報を伝えるという責任を果たすために色々な言い方で情報を伝えてくるのです。
聞き手側として話し手が伝えようとしている内容を理解したなら、繰り返しとなってもいいので理解した内容を相手に伝える意識をしてみてください。
You mean 〇〇? 〇〇ってこと?
I understand that ✖✖. ✖✖と理解した。
※〇〇には単語か文章、✖✖には文章が入ります。
上記のようなフレーズを使って理解を示すだけで、前述したような問題は解決します。
もしこちらの聞き手としての理解が間違っていた場合でも、認識の齟齬が残ったまま会話を続けるリスクを回避できます。
ハイコンテクストな会話に慣れている日本人の我々としては少し面倒に感じるかもしれませんが、ローコンテクスト言語を使用する英会話をスムーズに進めるためには必要不可欠です。
まとめ
英会話を学ぶためには語彙力や正しい文法表現などを習得することも、もちろん重要です。
しかし、ローコンテクストな意思の疎通を心がけるだけでもコミュニケーションが円滑になります。
話し手として直接的に伝えること、聞き手として理解を示すこと、英会話をする機会にぜひ試してみてください。
特にネイティブの先生とのレッスンを受けられる方は、本番の英会話の前にレッスン内で試してみることをお勧めします。