教科としての英語から、コミュニケーションのツールとしての英会話へ
2025.05.16
教科書からの勉強はできるが話すことは苦手。これは日本人の英語学習者に多い傾向です。しかし少し学習の見方を変えるだけで、この傾向を打破して劇的な上達をされる方もいます。今回はこれから英語の学習を始めようとする方や行き詰りを感じている方に、英会話をコミュニケーションのツールとして効果的に習得するために必要なポイントを、意識、知識、実践の観点からお伝えします。
1.学習イメージの切り替えを!
多くの日本人は義務教育の強化としての英語が学習のスタート地点となります。ほとんどの場合義務教育では与えられた問題をひたすら「解く」ことが求められ、英語をコミュニケーションのツールとして扱う機会は多くありません。しかし英語に関する問題を「解く」ことしか知らないと、いざ話してコミュニケーションを取ろうとしたときには頭は常に正解を探す状態となってしまいます。正解を探す思考に陥ると柔軟なコミュニケーションを取ることが難しくなってしまいます。
人とコミュニケーションをとる時に正解を探してしまうという状態は話し手と受け手の両方の立場において意思の疎通を阻害します。話し手として「答え」を探してしまうと、伝えるべき情報よりも伝える際の文法や発音に意識が向いてしまいます。その結果伝えるべき情報自体があいまいになってしまったり、そもそも完全な文章を作るために時間を使いすぎてしまうという結果になります。受け手の立場としても、本当は聞き取れなかった時もコミュニケーションの一環として質問をすることができるはずなのに、相手の発言を「問題」として捉えてしまい理解するために考え込んでしまうケースが多く見られます。このように英語を使ったコミュニケーションに「正解」を求めてしまうと大きなハンデを負ってしまうことになります。
この有害な「正解を探してしまう」思考から脱却するためには、まずは英会話に一語一句正解を求める必要はないという意識を持ってください。そして日頃から生の英語を聞く習慣をつけ、会話の流れも含めた受け応えの例を学ぶことが肝心です。様々なシチュエーションにおける英語を使ったコミュニケーションのパターンを理解して蓄えていくことも意識しましょう。多少文法や発音、使用する語彙のニュアンスが間違ってしまっても、この会話のパターンに当てはまるコミュニケーションを意識していれば英語をツールとして使った意思の疎通は可能です。そして実際のコミュニケーションの中には様々なアクセントがあり、いつも文法的に正しい話し方をしているわけではないことに気づくはずです。まずは本物を聞いてみてから真似していく気持ちを持ちましょう。
2.英語がどのように話されているかを知る
英語を使ったコミュニケーションのパターンつまり「英語がどのように話されているか」を知ることで、正しさを求めるのではなく実際の意思の疎通に役立つ英会話を身に付けることができます。日本語でも会話は状況に合わせて多様に変化します。ビジネスにおける会話、接客する時/される時の会話、友達や家族との会話、それぞれ会話の内容はもちろん、話し方や聞き方も変わっています。TPOに合わせた英会話のパターンを身に付けるためには2つの要素を知識として取り入れる必要があります。
1つ目は自然な言い回しや単語の使いどころです。話している相手によって自然な言い回しや語彙は変化します。この様々な状況に合わせた自然な英語を学ぶためにはネイティブの話す英語を真似することが一番の近道です。話しながら「この単語で合ってるかな?」「この文法は間違っているかもしれない…」とよく考えてしまう方は、文字だけでなくビデオ視聴や実際にネイティブと話すことなどで生の英語からのインプットを増やしていきましょう。フォーマルな会話やカジュアルな会話など、自分が英会話を実践することを想像して使えそうな言い回しの知識を増やしていきましょう。
2つ目は文字情報だけでは得られない非言語のコミュニケーションを学ぶことです。表情も意識して英会話上達という記事にもある通り、会話ではトーンや表情などもあなたの意志を伝えるための重要な要素となります。日本語では自然に出来ている非言語の意思伝達も英語になると緊張して上手に出来なくなる方も多くいらっしゃいます。そのような方でもフレーズを文字から学ぶだけでなく、「どのような場面で、どういう言い方をするか」を理解することで実践時のスムーズな意思伝達の練習ができるようになります。身振り手振りや声のトーンも含めた、包含的な英会話コミュニケーションを学ぶことを意識して、英会話の非言語の部分の習得にも挑戦してみましょう。効果的な非言語コミュニケーションに関してもまずは知識としてインプットできるように、ドラマや映画を見る時や実際にレッスン等で会話の練習をする際に注意を向けてみてください。
3.実際に使いながら修正
学生時代の英語の授業ではほとんどの方が受け身で学習をしてきています。提示された単語をひたすら覚える、先生が言ったフレーズを繰り返す、穴埋め問題をひたすら解く、といった学習内容です。もちろん基礎的な単語や文法を覚えることは英会話コミュニケーションを始める上では大切です。しかし覚えた単語やフレーズを英会話の中で実際に使用してみて、何が足りないのかを見極めていく必要があります。
「あの時こう言いたかったのに英語が出てこなかった…」そのような経験をベースにして改善を目指して英語学習をする時、自分で言えなかったことを言えるようになるために主体的な学習ができるようになり、学習効率が向上します。
よく「基礎をしっかりしてから会話したい」という気持ちからテキストの勉強を長く続けてしまう方がいます。教科書からは単語や文法などは覚えることができますが、実践する場所を積極的に探さないと、学んだ内容を使用できる場面と出会う機会はほぼありません。実際に使うことができない場合、コミュニケーションとしての英語の上達が滞ってしまいます。
学習イメージを変えて正しさではなくコミュニケーションの効果を意識する、そして状況に応じた効果的なコミュニケーションの取り方を知識として蓄える努力をするなら、「少しぐらい間違っていてもいいんだ。むしろそれは学びの機会だ。」ということに気づくことができるはずです。その気づきがあれば、「基礎がしっかり」していなくても英会話をしてもいい、ということに気づけるはずです。
目安として中学3年までの単語(英検3級程度)の知識がある方は英会話にトライしても問題ないでしょう。基本的な内容の会話は出来る語彙はありますし、知らないこと聞き取れなかったことを示すこともできるはずです。わからない場合は聞けば良いのです。新しい単語などを学ぶインプット、そしてそれを実際に使ってみるアウトプットの両方をバランスよくこなしていくことが大切です。アウトプットをすることで英語を修正する機会が生まれます。ツールとしての英会話を修正する機会を何度も設けることで、ツールの使い方が磨かれていくのです。
終わりに
今回は英語を独学で学ばれている方にも使っていただける英語学習効率化のポイントをお伝えしました。意識、知識、実践の考え方を変えることで英会話学習の効率を劇的に変化させることができます。ぜひチャレンジしていただけると嬉しいですが、実際ご自身が現在学習のどのステージにいて、何が必要かをしっかり見極めることは困難かもしれません。間違った方法で続けてしまうと非効率な学習になってしまうこともあります。もし何をしたらいいか迷う場合はまずはプロの講師に相談されることをお勧めいたします。