中級者が壁を乗り越えるために必要な英語学習
2025.10.23
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英語学習を始めてしばらくすると会話に慣れ、コミュニケーションが少し円滑に取れるようになってきます。しかしそのような段階で伸び悩む方が実はとても多いです。よく「中級の壁」と言われることもありますが、今回はそのような学習者が英語上級者になるためにはどのようなことをすればよいのかをまとめてみました。

中級とはどのようなステージか
TOEIC スコアでは測れない会話の中級
一般的に英語の中級者とはTOEICのスコアで言うと500~800 程とされていますが、スピーキングにおける中級かどうかは日本でよく英語力の指標として使われているListening & Reading のTOEICでは測ることができません。(TOEICはSpeaking & Writing もありますので、こちらでしたらスピーキング力を測ることが可能です。)実際TOEICを900点以上持っていてもスピーキングになると頭が真っ白になってしまう人もいるので、会話における中級とは「ネイティブスピーカーと基本的なコミュニケーションは可能だが、語彙が限定的、間違いや不自然な表現が見受けられ、聞き取りも完全ではない状態」ということが定義に近いと言えます。または「何もわからなかった初級から脱して英会話が少し楽しくなってきたステージ」でもあります。しかし会話が楽しくなってきた分、欠けているところに気が付きやすいのもこのステージの特徴です。
楽しいだけでは進まない上級への道
せっかく中級になって楽しくなってきた英会話なのですが、足りない部分を補って上級になるためには少し自分を律してもう一度しっかりと学習をしていく必要があります。詳しく見ていきましょう。
もう一度机に戻る必要性
会話が楽しくなってくると会話ばかり実践してしまう方も多いです。もちろん場数で学べることもあるのですが、中級者と上級者の大きな差の1つは構文力です。上級者は長い文章を自分で作ることができ、さらに相手の発した長い文章も問題なく聞き取ることができます。長い文章を聞いたときに何となくしか理解できないか、全て理解して反応できるかが中級と上級の違いです。そして、聞き取れるようになるためには自分でも同じ構文を操らなくてはならず、複雑な構文を会話で操るためには文章を読んで理解できることが前提となります。したがって「読解力=構文力」となるので、長い文章を操るために読解をしていく必要があるのです。残念ながら構文力は話しているだけでは上達していきません。もう一度机に戻るイメージで、今まで難しく感じて無視してきてしまった文法などを理解して使えるようにするタイミングがここです。そして多読により何度も同じ文章を読み、英文を前から理解していく力を鍛えていきます。読解するときに後ろから日本語に訳している段階では、会話で同じことが出てきたときにも一旦止まって訳さないと理解できなくなります。会話の英語を聞き取るためにも前から理解していく能力が大切です。自分のレベルより少し難しい教材を準備して、読解力と構文力を上げていくことが読解にも長い文章の聞き取りにも効果的です。今まで何となく理解して満足してしまっていたところを詰めていくイメージで学習するとよいでしょう。

上級の会話に必要な要素
「聞き手に負荷がかからない英語を話せているかどうか」も中級と上級の差の1つです。通じて楽しいという感覚は話し手の感覚ですが、聞き手がどのように受け取るかまで気を使えることが上級になるためには欠かせないスキルです。
外国人との日本語でのコミュニケーションを想像してみましょう。あまり日本語が流暢でない相手と接するときに、どのように感じるでしょうか?その人を心の底から信頼して胸の内を明かすことができるでしょうか?ほとんどの方が言語の壁を感じてしまい、自分の日本語レベルを相手に合わせて下げ、会話内容よりも円滑なコミュニケーションを優先すると思います。
私たちが英語を話すときも同様のことがネイティブスピーカーの聞き手に起こることを考えると、相手に負荷のない話し方ができることで初めてお互いを深く理解することができるのです。
聞き手に負荷をかけず一発で発言内容を理解してもらうためには、先ほどの構文力の他にも以下の要素が必要になります。
・聞き取りやすい発音・抑揚
・英語風の意見の言い方の順番(英語は結論ファースト)
・ニュアンスに合った単語やフレーズ選び
これらは実際に話されている英語を真似することで自然に身に着けることもできます。しかし意見の言い方の違いなどは日本語と英語の言語的な違いを理解した上で練習すると効果的ですので、一度バイリンガルの講師のレッスンなどで説明してもらい理解を深めると効果的に練習できるでしょう。聞き返されずに一回で聞き取ってもらえると、英語力の自信にも繋がります。ネイティブスピーカーを相手に堂々としていられることも上級者のスキルの1つです。
本場の英語を研究する
中級者が最も知りたいことの一つに「ネイティブには何が自然で何が不自然に聞こえるのか」という問いがあります。私も教えながらよく受ける質問ですが、実際に本当に何が自然かどうかは、一つひとつ日本語訳で確認していくよりも実際に使われている英語を聞いて真似をすることが効果的です。
例えば日本語でも予定は「立てる」もので「作る」は自然ではないですが、これを会話時に毎回考える人はいないと思います。自然な表現が考えずに使えるようになることがただ真似ることの利点です。英語でもdo a mistake ではなくmake a mistake が正解なので、その理由が分からなくても使えるという状態にすることが正確さと会話スピードを両立させるコツです。
正確な単語選びができるようになると、聞き手であるネイティブスピーカーにとっての違和感が少なくなっていきます。英語を使って相手から一目置かれる存在になる必要のあるビジネスパーソンや外国人の友人や恋人を作りたい方は、日本語訳を介して学ぶ英語を脱して自然な英語を真似する意識を持つと目標達成に効果的です。
映画や海外ドラマ、ニュース番組など日頃英語で何かを視聴する機会が少ない方は、英語のメディアから本場の英会話を取り入れる習慣をつけることが自然な英語を身に着けていく第一歩となるでしょう。
英語で理解できる分野を増やす
英語のメディアを見ることを習慣化すると効果的と前述しましたが、これにはもう一つ利点があります。それは英語で理解ができる分野が増えていくということです。
中級者がよく陥りがちな考え方として、英会話の時に何か話せないことがあるとすべて英語のせいと思ってしまうことが挙げられます。もちろん英語の語彙が追い付かないということもありますが、多くの場合はそもそも会話の内容が日本語でも理解できないことが原因です。自分の専門外で日本語でも説明が難しいことを英語で説明しようと自分に求めることは自分に対して酷なので、まずは話せない、会話についていけない原因が何なのかをしっかりと理解しておく必要があります。
その上で、日頃の情報収集の中で英語を使って教養を持つ分野を広げる習慣をつけていくとよいでしょう。

英語で情報を取り入れる
私たちの日頃の情報の取り入れ方を考えると、自分から探す情報と勝手に流れてくる情報の2つに分けられます。興味のある事柄に関しては自分から探しに行けるのですが、あまり興味のない事柄にはそれに触れることのできる環境を作っておかないと出会うことができません。この「勝手に流れてくる情報との出会い」を日常の中でどれだけ英語で実現できるかが新しい分野の語彙力や知識の向上に関わっています。
上述の映画やドラマでも選ぶジャンルによっては新しい単語や知識に出会うことはできますが、常に知識が入ってくるようにするには日頃必ずチェックするものを英語にすることが効果的です。スマホにすでに入っているSNSやニュースアプリを英語の設定にすることで、自分の守備範囲外の英語に日々触れることができるはずです。毎日触れることに関して完璧に理解をしようとすると難しいかもしれません。そのように感じる方は、まずはその特定の分野について簡単に意見を持って話ができるようになる程度を目標とするとよいでしょう。ネイティブ講師のレッスンなどを受講している方は、英語で読んだことを英語で話すようにすることで新しい分野での英語の運用力を鍛えることができます。
身の回りのことがある程度話せるようになってきた方は、ぜひ違う分野の英語での会話にもチャレンジしてみましょう。
終わりに
今回は中級から上級へのレベルアップの方法をいくつかお伝えしました。一度学習の行き詰まりを感じると脱却は難しく感じます。今回お伝えした方法をお試しいただいても英語上達が実感できない場合は、コーチングなどプロの助けを借りると打開策が見えてきます。不自由なく英語を使いこなせる上級者の世界は新しい発見が多く、さらに楽しいはずです。
行き詰ってもあきらめず、ぜひ上級者を目指して日々の学習を継続してみてください。
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執筆者: 吉田 翔平 ― バイリンガル英会話コーチ 英会話コーチング歴6年 アメリカ在住2年 日本の外国語大学にて英米語を専攻、卒業後渡米。アメリカ在住時は日常生活やボランティア活動などを通じて現地の人々の信条や文化を学び帰国。18歳まで全く英語が話せなかったが、ネイティブスピーカーに深く受け入れられる存在になれた学習経験を共有したく英会話コーチになる。現在は帰国後出会ったアメリカ人パートナーと日米の文化を毎日すり合わせながら生活中。 |

